毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

それが消えていた。
机の上に置いていた古文書も紛失していた。
龍鳳茶の栽培方法が記された、貴重な文献。
全て奪われた。
鈴音は拳を握りしめた。
翠蘭が震える声で言った。
「皇太后派の仕業です」
鈴音は翠蘭を見た。
「証拠は?」
「ありません。でも」
翠蘭は唇を噛んだ。
「こんなことができるのは、あの方たちだけです」
鈴音は深呼吸をした。
怒りを抑える。冷静にならなければ。
「皇帝に報告する」
二人は茶室に戻り、鈴音は急いで皇帝に使いを送った。
一刻もしないうちに、皇帝が茶室に現れた。
金色の龍袍。厳しい表情。
「何があった」
鈴音は跪いた。
「陛下、茶園が荒らされました」
詳細を報告する。
茶の木が引き抜かれたこと。
希少な茶葉が盗まれたこと。
古文書も紛失したこと。
皇帝の顔が次第に険しくなっていった。
報告を聞き終えると、皇帝は立ち上がった。
「許さぬ」
低い声だった。
でもその声には、恐ろしい怒りが込められていた。
皇帝の目が、変わり始めた。
黒い瞳が、金色に光る。
鈴音は息を飲んだ。
龍化の兆し。
皇帝の首筋に、細かい鱗が浮かび上がってきた。
手の甲にも、金色の紋様が現れる。