毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

ただそばにいる。それしかできなかった。
梅香が落ち着くのを待ってから、鈴音は立ち上がった。
「お茶を淹れます」
茶器を準備する。
今夜は特別な茶を。
棚から茶葉を選ぶ。
カモミール。西洋から伝わった花茶。
ほうじ茶。香ばしく、優しい味。
そして蜂蜜。
これらをブレンドする。
梅香は黙って見ていた。
「カモミールには、心を落ち着かせる効果があります」
鈴音は説明しながら作業を続けた。
「ほうじ茶は、身体を温める。そして蜂蜜の甘さが、心を癒す」
湯を沸かす。
適温になったところで、茶葉に注ぐ。
立ち上る湯気。
その中に、花の幻影が見えた。
優しく咲く花々。白いカモミールの花。
その花が、梅香を包み込むように揺れている。
鈴音は茶を茶碗に注いだ。
琥珀色の茶。甘い香りが漂う。
「どうぞ」
梅香に差し出した。
梅香は茶碗を受け取った。
まず香りを嗅ぐ。
目を閉じる。
「良い香り」
そして一口飲んだ。
梅香の表情が変わった。
強張っていた顔が、少しずつ緩んでいく。
「温かい……」
呟いた。
「母の手のよう」
もう一口、また一口。
ゆっくりと茶を飲む。
鈴音は静かに見守っていた。