毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「もう、何日も」
その声には、深い疲労が滲んでいた。
鈴音は梅香の隣に座った。
「お話を聞かせてください」
温かく、優しい声で言った。
梅香はしばらく黙っていた。
月明かりの中、じっと床を見つめている。
やがて、口を開いた。
「いつから、だと思う?」
「分かりません」
鈴音は正直に答えた。
「三年前よ」
梅香の声が震えた。
「それから、一度も安眠できていない」
鈴音は静かに待った。
梅香が自分のペースで話せるように。
「私には、子供がいた」
梅香の目が潤んだ。
「いえ、いるはずだった」
涙が頬を伝う。
「三年前、妊娠した。皇帝の子を」
鈴音は息を飲んだ。
「とても嬉しかった。やっと、私にも子供ができる」
梅香の手が、自分の腹を撫でた。
「でも」
声が途切れる。
「八ヶ月で、死産した」
涙が止まらなくなった。
「私の子は、生まれることなく死んだ」
鈴音は梅香の肩を抱いた。
「辛かったですね」
「それから、眠れない」
梅香は泣きながら言った。
「目を閉じると、あの子の顔が浮かぶ。会ったこともない顔なのに」
鈴音は黙って抱きしめた。
言葉では、慰められない痛みがある。