毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

妃たちは互いに目配せしていた。
鈴音は冷静に対応し続けた。
怒りを見せない。動揺を見せない。
ただ、茶を淹れることに集中する。
やがて、全員の前に茶碗が並んだ。
妃たちは茶を飲み始めた。
鈴音は密かに観察していた。
各妃の茶碗の香りを。
梅香の茶碗から立ち上る湯気。
その中に、苦い薬草の香りがした。
不眠の薬だ。
梅香は眠れていないのだ。
蘭芳の茶碗からは、甘い香りが過剰に漂っていた。
菓子を食べ過ぎている。美容への焦りが見える。
第三妃の茶碗からは、酸っぱい香り。
胃の不調。ストレスだろう。
第四妃は、茶を飲む手が震えていた。
不安。恐怖。何かに怯えている。
第五妃は、茶碗を睨むように見つめていた。
怒り。抑えきれない怒り。
第六妃は、茶に手をつけようともしなかった。
拒絶。全てを拒絶している。
鈴音は理解した。
この妃たちは、敵ではない。
ただ、苦しんでいるだけなのだ。
鈴音は茶碗を置いた。
全員を見渡す。
「皆様」
静かに呼びかけた。
妃たちが顔を上げる。
「それぞれ、お悩みがあるのですね」
その言葉に、妃たちの表情が変わった。
驚き。戸惑い。
梅香が眉をひそめた。