毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

その声は丁寧だったが、温かみはなかった。
鈴音は指定された席に座った。
梅香の正面。一番目立つ位置。
「茶妃様の腕前、拝見したいわ」
梅香が言った。
他の妃たちが頷く。
「ぜひ」
「楽しみですわ」
言葉は丁寧だが、目は笑っていなかった。
茶会が始まった。
侍女が茶器を運んでくる。
鈴音が茶を淹れようと茶碗を手に取った瞬間。
隣に座っていた妃が手を伸ばし、茶碗に触れた。
バランスが崩れる。
茶碗が床に落ちた。
パリン。
割れる音が響く。
「あら、ごめんなさい」
妃は謝ったが、その目は笑っていた。
わざとだった。
鈴音は深呼吸をした。
「構いませんわ」
別の茶碗を手に取る。
今度は慎重に扱った。
湯を沸かし始めた時、蘭芳が突然立ち上がった。
「暑いわね」
扇で仰ぎながら、鈴音の後ろを通る。
その時、袖が鉄瓶に触れた。
鉄瓶が傾く。
熱湯が鈴音の方へ。
鈴音は素早く身を引いた。
熱湯が床に零れる。
「まあ、危ない」
蘭芳は大げさに驚いた顔をした。
「ごめんなさい、不注意で」
鈴音は立ち上がり、こぼれた湯を布で拭いた。
「大丈夫です」
声は穏やかだった。でも心臓は激しく打っていた。