毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「お妃様、皇太后様がお見えです」
鈴音の背筋が凍った。
皇太后。慈恵。
あの陰謀の黒幕。
扉が開いた。
現れたのは、冷たい美貌の女性だった。
五十代と思われるが、肌は白く滑らか。黒い瞳は鋭く、薄い唇は一文字に結ばれている。
金色の衣装。頭には鳳凰の飾り。
圧倒的な威圧感。
鈴音は跪いた。
「皇太后様」
慈恵は茶室を見渡した。
「随分と、気に入っているようね」
冷たい声だった。
「もったいのうございます」
鈴音は頭を下げたまま答えた。
慈恵は鈴音の前に立った。
「顔を上げなさい」
鈴音は顔を上げた。
慈恵の目が、鈴音を値踏みするように見つめる。
「皇帝の寵愛は、長くは続かぬ」
断言するような口調だった。
「男の心は移ろいやすい。特に皇帝は、多くの美女に囲まれている」
鈴音は黙って聞いていた。
慈恵は扇を開いた。
「出過ぎた真似をすれば」
扇で鈴音の頬を撫でる。
冷たい感触。
「次は、命はないと思いなさい」
脅迫だった。
明確な。
鈴音は慈恵の目を見返した。
「肝に銘じます」
慈恵は満足そうに微笑んだ。
「賢い娘ね」
そう言って、茶室を去っていった。