毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

皇帝の顔が歪んだ。
苦痛の表情。
鈴音は息を飲んだ。
皇帝の目が、変わり始めた。
黒い瞳が、金色に光る。
皮膚に、何かが浮かび上がってきた。
鱗。
細かい鱗状の紋様が、首筋から頬へと広がっていく。
龍化。
この人は、本当に龍なのだ。
「下がれ!」
皇帝が怒鳴った。
でもその声には、怒りではなく苦痛が滲んでいた。
茶碗が手から落ちそうになる。
鈴音は立ち上がった。
「陛下!」
「来るな!」
皇帝は必死に自制しようとしていた。
でも鱗はさらに広がっていく。手の甲、腕。
呼吸が荒い。額に汗が浮かんでいる。
鈴音は恐怖を感じた。
でも、それ以上に強い衝動があった。
この人を助けたい。
鈴音は恐怖を押し殺し、茶器の置かれた台に向かった。
「何を……」
皇帝の声を無視して、鈴音は茶器を確認した。
抹茶があった。
前世の記憶が蘇る。
興奮を鎮める茶。心を落ち着かせる茶。
抹茶だ。
鈴音は素早く動いた。
茶碗に抹茶を入れる。湯を注ぐ。
茶筅を手に取り、点てる。
シャカシャカシャカ。
茶筅の音だけが、静寂の部屋に響く。
濃い緑色の泡が立つ。
完璧な抹茶ができあがった。