毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

全ての想いを、この一杯に込める。
愛する人のために。
大切な仲間たちのために。
この後宮のために。
そして、自分自身のために。
湯を注ぐ。
茶葉が開いていく。
銀色の光が、茶碗の中で輝く。
立ち上る湯気。
その中に、穏やかな龍の幻影が見えた。
暴れる龍ではない。
優しく微笑む龍。
完成した。
龍鎮の茶が。
鈴音は茶碗を両手で持った。
立ち上がる。
妃たちの前に出た。
「鈴音!」
梅香が止めようとした。
でも鈴音は首を横に振った。
「大丈夫」
微笑んで見せた。
「信じてるから」
龍の前に立つ。
小さな人間。
巨大な龍。
対比が圧倒的だった。
でも鈴音は怯まなかった。
茶碗を掲げた。
高く。
そして叫んだ。
「煌龍!」
大きな声で。
龍の動きが止まった。
金色の目が、鈴音を見下ろす。
「私の声が聞こえますか!」
鈴音は涙を流しながら叫んだ。
「戻ってきて!」
龍が唸った。
低く、苦しそうな音。
鈴音は一歩前に出た。
「あなたを信じてる!」
涙が頬を伝う。
「あなたは優しい人。龍に支配されない、強い人」
もう一歩。
「一緒に未来を生きたい!」
声が震える。