毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

妃たちに向かって降下してくる。
「もっと時間を!」
鈴音が叫んだ。
妃たちは必死に呼びかけた。
「陛下、思い出してください!」
蓮華が叫んだ。
「私たちと過ごした日々を!」
菊花が続けた。
「茶話会で笑い合ったこと!」
静華が涙声で言った。
「あなたは優しい方でした!」
龍の動きが、また止まった。
金色の目が揺らぐ。
奥底で、何かが反応している。
人の心が、まだ残っている。
鈴音は銀龍茶の葉を手に取った。
摘んだばかりの葉。
若く、柔らかい。
銀色に光っている。
茶碗に入れる。
湯が沸いた。
鉄瓶を持ち上げる。
熱い。
手が震える。
でも、正確に湯を注いだ。
茶筅を手に取る。
点て始める。
シャカシャカシャカ。
その音が、混乱の中で響いた。
鈴音は全神経を茶に集中した。
周囲の炎も。
龍の咆哮も。
妃たちの叫びも。
全て消えた。
ただ、茶だけがあった。
前世の記憶が蘇る。
日本茶カフェでの日々。
師匠の教え。
「茶は心」
常連客の笑顔。
「美味しい」と言ってくれた人たち。
そして現世の記憶。
皇帝との出会い。
龍化を鎮めた夜。
妃たちとの絆。
茶話会の笑い声。