毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

炎が迫る。
でもその瞬間、鈴音は叫んだ。
「ここで茶を淹れる!」
妃たちが驚いて振り返った。
「何を......」
「時間を稼いで!」
鈴音は茶器を地面に置いた。
焼け跡の中央。
瓦礫が散乱している場所。
でも、ここしかなかった。
梅香がすぐに理解した。
「分かったわ!」
妃たちの前に立つ。
「みんな、鈴音を守って!」
蘭芳が頷いた。
紫苑、蓮華、菊花、静華も並ぶ。
六人が盾になって、鈴音の前に立った。
龍の炎が放たれようとした。
その時、梅香が叫んだ。
「陛下!」
大きな声で。
「私たちを見てください!」
蘭芳が続けた。
「私たちは、あなたの妃です!」
紫苑が涙を流しながら言った。
「殺さないでください!」
その声に、龍の動きが僅かに止まった。
炎は放たれなかった。
わずかな躊躇。
でもそれで十分だった。
鈴音は素早く動いた。
燃えている瓦礫から、炭を取る。
熱い。
手が焼ける。
でも構わなかった。
炭を地面に置く。
鉄瓶を乗せる。
翠蘭が水を汲んできた。
池から全力で走ってきたのだ。
「お妃様!」
鉄瓶に水を入れる。
湯を沸かし始めた。
龍がまた動き出した。