毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「何だと?」
「茶を淹れる? 今から?」
「馬鹿な」
嘲笑が広がる。でも鈴音は気にしなかった。
皇帝が手を上げると、群衆は再び静まった。
「茶器を持ってこい」
皇帝の命令に、兵士たちが動いた。
しばらくして、翠蘭が現れた。
茶器を乗せた盆を抱えている。その顔は涙で濡れていた。
翠蘭は処刑台を登り、鈴音の前に茶器を置いた。
「お妃様……」
震える声で囁く。
「ありがとう」
鈴音は微笑んだ。
翠蘭は頷き、後ろに下がった。
処刑台の上に、即席の茶席ができあがった。
茶碗、茶筅、茶入れ、鉄瓶。全て揃っている。
異様な光景だった。
死を待つ場所に、茶の道具。
断頭台の隣に、茶席。
群衆は呆れたように見ている。
でも鈴音には関係なかった。
鈴音は茶器の前に座った。
深呼吸をする。
手枷がついたままだった。手首が縛られている。
でも、指は動く。
それで十分だった。
茶入れを開ける。中には複数の茶葉が入っていた。
龍井茶、碧螺春、白毫銀針。
鈴音は一つ一つを手に取り、香りを嗅いだ。
どれも純粋な茶葉だった。毒の気配はない。
そして、もう一つ。
茶会で使われた茶碗。押収されていたものだ。