毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

もう何も残っていない。
龍鎮の茶は、こぼれた。
皇帝は、龍になった。
後宮は、燃えている。
希望は、消えた。
鈴音は破片を握りしめた。
手のひらに食い込む。
痛い。
でも、心の痛みに比べれば何でもなかった。
「お妃様!」
梅香の声がした。
振り返ると、妃たちが戻ってきていた。
全員、泥まみれ。
煤で黒くなっている。
でも、目は輝いていた。
「諦めないで!」
梅香が鈴音の腕を掴んだ。
「まだ終わってない!」
蘭芳が叫んだ。
「立って!」
紫苑が鈴音を引き起こそうとした。
でも鈴音は首を横に振った。
「もう何も残ってない......」
力のない声。
「茶碗も割れた。茶もこぼれた。全部、終わったの」
蓮華が鈴音の肩を揺さぶった。
「まだ茶葉は残ってるわ!」
「え......」
鈴音は顔を上げた。
菊花が頷いた。
「銀龍茶の茶葉。まだ茶園に残ってる!」
静華が力強く言った。
「もう一度、淹れられるわ!」
翠蘭が走ってきた。
茶器を抱えている。
予備の茶器。
鉄瓶、茶碗、茶筅。
「お妃様、これを!」
息を切らせながら言った。
「隠しておいた予備です!」
鈴音は茶器を見つめた。
まだ、できる。