毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

でも鈴音は動けなかった。
ただ、皇帝を見つめていた。
変わっていく姿を。
人から、龍へと。
翠蘭が鈴音の腕を掴んだ。
「お妃様、早く!」
引っ張る。
鈴音は翠蘭に引きずられるように、大殿を出た。
背後で、轟音が響いた。
振り返ると、大殿の屋根が吹き飛んでいた。
木材が空中に舞う。
瓦が砕け散る。
そして。
巨大な金龍が現れた。
煌龍が、完全に龍の姿になっていた。
全長十メートルを超える巨体。
金色の鱗が、太陽の光を反射して眩く輝いている。
鋭い爪。
長い尾。
巨大な翼。
そして目。
金色に光る目。
そこには、もう人の心はなかった。
ただ、怒りだけがあった。
龍が咆哮した。
グオオオオオオ!
その声は、天地を揺るがした。
大気が震える。
地面が揺れる。
人々が耳を塞いで倒れ込む。
龍が動いた。
尾を振るう。
大殿の柱が折れた。
壁が崩れる。
建物全体が傾く。
そして、崩壊した。
轟音と共に、大殿が瓦礫の山になった。
「皇帝様が......」
「龍に......」
「逃げろ!」
後宮中が混乱に陥った。
妃たち、侍女たち、宮女たち、高官たち。
全員が逃げ惑う。
悲鳴が響き渡る。