毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

湯の温度を正確に保つ。
七十度。
これより高くても、低くてもいけない。
鈴音は鉄瓶を火にかけた。
湯の音に耳を澄ませる。
沸騰の一歩手前。
そこで火から下ろす。
温度計で確認。
七十度。
完璧だった。
茶葉に湯を注ぐ。
立ち上る湯気。
香りが広がる。
翠蘭が付き添っていた。
「頑張ってください」
小さく囁く。
鈴音は頷いた。
最初の一煎ができあがった。
茶碗に注ぐ。
淡い銀色の茶。
鈴音は一口飲んだ。
味を確かめる。
「まだ足りない」
眉をひそめる。
「何かが、まだ足りない」
翠蘭が心配そうに見ている。
鈴音は再び茶葉を調合した。
配合を変える。
銀龍茶の割合を増やす。
もう一度、湯を沸かす。
二煎目。
試飲する。
「まだだ」
三煎目、四煎目、五煎目。
何度も繰り返す。
でも、完璧な味に辿り着かない。
夜が明けていった。
朝日が窓から差し込む。
鈴音は疲れていた。
手が震える。
目が霞む。
でも止められなかった。
六煎目、七煎目、八煎目。
試行錯誤が続く。
翠蘭が心配そうに声をかけた。
「お妃様、少し休まれては」
「大丈夫」
鈴音は首を横に振った。
「もう少しで、分かる気がする」