毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「あなたが無事なら、それでいい」
翠蘭の目が閉じた。
意識を失った。
「翠蘭!」
鈴音の悲鳴が、夜に響いた。
「翠蘭! 目を開けて!」
揺さぶる。
でも反応がない。
呼吸は浅く、顔は蒼白だった。
鈴音は翠蘭を抱きしめた。
「お願い……死なないで……」
涙が止まらなかった。
背後で、茶室が崩れ落ちる音がした。
振り返ると、炎がさらに激しくなっていた。
黒煙が空に立ち上る。
火の粉が舞い散る。
茶室が、完全に崩壊しようとしていた。
鈴音は燃え落ちる茶室を見つめた。
全てが失われた。
茶器も、茶葉も、思い出も。
全て。
絶望が、胸を満たした。
もう、何も残っていない。
茶室がない。
道具がない。
翠蘭は瀕死だ。
銀龍茶の種も、手に入らなかった。
全てが、終わった。
「どうして……」
鈴音は呟いた。
「どうして、こんなことに……」
その時、馬の蹄の音が聞こえた。
大勢の人間が近づいてくる。
松明の光。
禁軍だった。
そして先頭に、皇帝がいた。
煌龍が馬から飛び降り、走ってきた。
焼け跡を見て、足を止めた。
顔が蒼白になる。
そして池のほとりに倒れる鈴音と翠蘭を見た。
「鈴音!」