毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

男はそれだけ言うと、足早に去っていった。
鈴音は包みを握りしめた。
空だった。
男は本物の種を持っていなかった。
受け取りは夜。
翠蘭が心配そうに近づいてきた。
「お妃様、何か嫌な予感がします」
その声は震えていた。
「夜の茶園なんて、危険です」
鈴音も同じことを感じていた。
罠かもしれない。
でも。
「でも行くしかない」
鈴音は翠蘭を見た。
「銀龍茶の種、これを逃せば二度と手に入らないかもしれない」
翠蘭は唇を噛んだ。
「では、私も一緒に」
「翠蘭……」
「お妃様を一人で行かせるわけにはいきません」
その目は決意に満ちていた。
鈴音は頷いた。
「ありがとう」
夜が訪れた。
月は雲に隠れ、暗い夜だった。
鈴音と翠蘭は、灯りを持って茶園へ向かった。
禁軍の見張りがいるはずだったが、不思議なことに誰もいなかった。
「おかしいですね」
翠蘭が囁いた。
「見張りがいない」
鈴音も不安を感じた。
でも引き返すわけにはいかなかった。
茶園の小道を進む。
静寂。
不気味なほどの静寂。
虫の音さえ聞こえない。
茶園の中央に着いた。
誰もいなかった。
「おかしい……」