毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

目を覚ますと、天蓋が視界いっぱいに広がっていた。
刺繍された金糸の鳳凰が、朱色の絹地の上で羽ばたいている。豪華絢爛という言葉では足りない。この寝台は、鈴音が知っているどんな家具よりも華やかで、重厚で、非現実的だった。
心臓が不規則に打つ。頭の中で二つの記憶がせめぎ合っていた。
日本茶カフェの白い壁。常連客の笑顔。茶筅で抹茶を点てる音。
朱色の柱が連なる回廊。絹の衣擦れ。香炉の煙。
どちらが本物なのか。
鈴音は上半身を起こした。身体が軽い。手を見る。二十代後半だったはずの手が、十代の少女のように滑らかだった。
「何が……」
声が震える。寝台から降り、部屋の隅にある銅鏡へと歩み寄った。
鏡に映ったのは、見知らぬ美女だった。
漆黒の長い髪。切れ長の瞳。象牙のような白い肌。唇は紅を引いていないのに薄紅色で、鼻筋は高く、顔立ちは中華風の典雅さを湛えていた。
これが、私?
鈴音は自分の頬に触れた。鏡の中の美女も、同じ動作をする。
現実感がない。でも、これは夢ではない。肌に触れる絹の感触、鼻腔をくすぐる香炉の香り、全てがあまりにも鮮明だった。