この恋、予定外。

「名前…なんだっけ」

ぽつりとつぶやいた高橋さんの顔は、まだ不機嫌。

会議が始まる前に、ちゃんと名乗ったのに!
覚えてないとか、社会人失格!

「営業部の森川茉央(まお)です」

「はーい、よろしく」

全然よろしくない。


…なんなの、そのやる気のない声。
だるさマックス。めんどくさそうな表情。
全部が、人として許せない。

いや、そもそもこの人、人の心あるんか?


一緒に仕事するなんて、マジで無理。

でもその直後。
手の中にある資料を見下ろして、葛藤する。


夕方まで崩れないファンデ。

それは売れる。
ものすごく売れる。
売れるに決まってる。
私も欲しい。

仕事としては、ちょっと面白い。


─────心の中が、いつもに増して騒がしい。



••┈┈┈┈••

ぞろぞろと会議を終えてみんなが出ていく。

私は会議室のドアを閉め、借りていた鍵で施錠したあと、さっさと行こうとする桐山課長を呼び止めた。

「課長!」

「ん?」

一服しようと思っていたのか、振り向いた課長の手にはもう電子タバコの本体。
気持ち早すぎ。


私は書類を抱えたまま急いで桐山課長の前に回り込んだ。
よし、進路は塞いだ。

「なにか言い忘れか?」

すっとぼけた表情を浮かべる課長を、真正面から睨む。

「あの、私、高橋さん、無理なんですけど」