この恋、予定外。

高橋さんは椅子に背を預けたまま答えた。

「朝から夕方まで崩れない」

淡々と提案する。

「最後まで、顔にフィットする。シンプルに、分かりやすく。どうです?」

マーケ担当が少し身を乗り出すのが見えた。

「…Last Fit、いいですね!」


─────え、みんなに刺さってんじゃん。
なんとなく、解せない。
でも私の中でも拭いきれない、「買いたくなってしまう」ネーミング。


桐山課長がニヤリと笑みをこぼした。

「それでいこう」


満場一致の空気の中、負けず嫌いが発動して私にもなにかいい案が浮かべばよかったけれど。
残念ながらいい商品名は出てこなかった。

細かいデータやグラフが並ぶ資料を見下ろした。


Last Fit。
夕方でも崩れない顔。


営業の一日が、頭の中に浮かぶ。

…本当に悔しいけど。
悪くない。


高橋さんはもう次の話を進めていた。
まるで、さっきの言葉なんてどうでもいいみたいに。

「試作08を作っていきます。07は一度、社内で使用感を見ます」

桐山課長が力強くうなずいた。

「よし。じゃあ詰めていこう」

彼はそう言って会議室を見回す。
そして、すぐに隣にいる私をじっと見つめてきた。

目が合ったものの、急いで逸らす。
これは、嫌な予感しかしない。


「営業は森川。開発は高橋くん。二人で頼む」

「ええっ」

小さく悲鳴めいた声を出してしまい、慌てて両手で口を塞ぐ。
しかし、もう遅い。

課長だけでなく、高橋さんもこちらを見ていた。
目を細め、“俺が?こいつと?”みたいな顔をして。