この恋、予定外。

高橋さん少しだけ考えるように下を向いた。
そして、まるで答えを見つけたかのようにまた私を見る。その視線は、やはり鋭い。

「そっちが言ってるのは、結果の話だ。こちらの処方の強みは密着だ」

私は息を飲む。

「夕方崩れないのは、その結果」

言い淀んでしまった私の負けだった。
高橋さんに先に言われてしまった。

「密着度を上げる。他は変えない。そうすりゃ、自然と崩れなくなる」


─────やっぱり苦手だ、この人。

私の意見を全部まちがってるみたいな言い方で跳ね除ける。
こちらの視線をいとも簡単に外してくる。
そして、絶対的自信を持っている。

さらに悔しいのが、間違ったことは言ってない。

モヤモヤだけが残った。



桐山課長の顔はもう険しくなかった。
なんとなく会議が進んだ感じは、全体に漂っているからだろう。

課長が何回か資料をめくった。

「うーん、そうなると、商品名はどうする?売りは密着ということになると…」

マーケ担当が悩ましげに眉を寄せる。ペンを持ったまま頬杖をつく。

「ネーミング考えないとですね。できればぱっと聞いて耳に残るような、そういうのあればいいんですが」


商品名というのは、売れるか売れないかを大いに左右する。
それをよく分かっているからこその、沈黙。
手に取りたいと思う名前。

私が椅子によりかかって天井を眺めたその時。

高橋さんが資料を閉じ、小さく一言。

「Last Fit」


会議室の空気が一瞬止まる。

桐山課長がすぐに食いついた。

「へえ?意味は?」

課長のその顔を、何度も見たことがある。
明らかに気に入っている。