この恋、予定外。


無愛想。
目つきが悪い。
そして、やたら背が高い。

技術職特有の、感情が読み取れない顔。
営業部だったらありえない、曲がったネクタイ。

…それなのに、なぜか整って見えるのが腹立つ。



会議室の空気は妙に静かだった。

プロジェクターの光が長いテーブルを白く照らしている。


スクリーンには今日の議題。

新商品ベースメイクプロジェクト 試作07


高橋さんが資料をめくりながら淡々と言った。

「試作07は、皮脂耐久テストをクリアしてます」

低くて落ち着いた声。
感情がほとんど乗っていないのに、不思議と会議室の奥まで届く。


テーブルの向こうでは、企画部の社員がメモを取っている。
マーケ担当は腕を組んでスライドを見ていた。

営業部の桐山部長も、険しい顔で私の隣に並んでいる。


私はぎゅっとペンを握りしめて、ずっと一定の温度で説明をする高橋さんに口を挟んだ。

「でもこの試作07、崩れますよ。営業の一日なら」

会議室の空気がプツリと止まる。

高橋さんの鋭い視線がこちらに向けられた。
人を見る目じゃない。データを見る目だ。

「どこが崩れる?」

私は自分の頬を軽く叩いた。

「ここです。営業って、夕方この顔なんですよ」

マーケ担当が興味深げに顔を上げる。

「夕方?」

即座にうなずいて見せた。

「朝メイクしてから、ほぼ直せないんです。外回りして、商談して、移動して、また説明して。その繰り返し」

私は資料には視線を落とさずに続ける。

「だから、夕方には頬が崩れます」