この恋、予定外。

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店を出ると、夜の空気がさっきまでの店内の熱をゆっくりと冷ましていく。
なのに、胸の奥だけは、ずっと熱いままだった。


私たちの間に流れる沈黙。

気まずさがあるとか、話すことがないとか、そういうことではない。
このときの私は、なにもかもがいっぱいいっぱいだった。


歩きながら、何度も思う。
さっきの言葉。
あの声。
あのタイミング。

全部がちゃんと現実なのに、まだどこか信じきれていない自分がいる。

「……あの」

耐えきれなくなって、声を出した。
隣を歩く彼は、いつもと同じ顔で、同じ歩幅で進んでいる。
さっきあんなことを言った人とは思えないくらい、普通に。


「独身貴族になる予定は、どうなったんですか?」

自分で聞いておいて、ちょっとだけ笑ってしまう。あのときの会話を、なぞるみたいに。

高橋さんはふと立ち止まって、考えるように夜空を見上げる。そして、ひと言。

「森川が吹っ飛ばしたんだろ」

あっさりした言い方で返ってくる。

「押しても押しても、全然動いてくれなかったくせに」

「動いてるよ、ずっと」

そんな空気を一ミリも感じさせなかったのに、どうやったらその口から“動いてるよ”なんて出てくるのか。

「証拠は?」

「証拠?……そんなの」