この恋、予定外。

「森川に“ちゃんと見てよ”って言われたのも、残ってて」

一気に思い出す。
あのときの自分の声。彼に届いていた。

「見てるつもりだったけど、全然足りてなかったなって思ったし」

そこまで言って、少しだけ間が空く。


「……俺、どこまで話したっけ?」

その一言で、全部持っていかれる。
思わず、笑ってしまった。顔は熱いまま。


「私、すごくないですか?」

「なにが?」

「ラーメン、むせなかったです」

私が自慢げに言ったからか、彼も笑った。

「最初っから。いっつも、全部。想像のはるか上いくんだもん、森川の発言」

残っているラーメンを、また食べ始める。
美味しそうにすすっている横顔を、今度はちゃんと見れた。

「私と一緒にいて、楽しいですか?」

聞いたら、目が合った。
彼はまだラーメンを口の中でもぐもぐと噛みしめながら、うなずいた。

「うん」

「私のこと、好き?」

「うん」

照れもしないし、否定しない。
その潔さと、まっさらでまっすぐな瞳に、もうやられっぱなしだった。


このまま隣に寄りかかろうかな、なんて思っていたら。
目の前にドン!と大盛りのチャーハンが置かれた。

店主のおじさんが、なにやら感激したように目を潤ませている。
高橋さんが不思議そうにそのチャーハンを見つめた。

「えっ?あの、これ頼んでませ…」

「なんにも言うな。お幸せにな。サービスだ」

被せ気味にそう言い、おじさんがにやりと笑う。


私たちは顔を見合せる。違う意味で。
量があまりにも、多すぎる。

「麺、大盛りしなくてよかった…」

私がつぶやくと、隣で笑う気配がした。

「ちゃんと全部食うのかよ」という声と一緒に。


さっきまであんなにぐちゃぐちゃだったのに。
ちゃんと、笑えている。
前と同じ場所なのに。
今は、ちゃんとここにふたりでいられる。