この恋、予定外。

「森川」

名前を呼ばれて、そのまま動けなくなった。
その一音だけで、空気が変わる。肌で感じ取れた。

「俺さ」

さっきまでの流れとは違う。ほんの少しだけ、間がある。言葉を選んでいるみたいな、そんな間。

…なんだろう。
胸の奥が、嫌な音を立てる。

「森川と仕事するの、好きだった」


意味が、すぐに入ってこない。
言葉としては理解できるのに、感情が追いつかない。
“好きだった”という過去形。

……また、ここで終わるの?


「……いや、違う」

と、意外な言葉がまた聞こえた。私の心を読んだ?とも思ったけど、そうではない。
彼の表情とその言い直しで、ようやく分かった。


─────あ、これ。
逃げられないやつだ。


「俺、森川のこと好きなんだ」


一瞬、全部の音が遠くなる。
鍋の音も、隣の客の声も、全部ぼやける。

「……え」

思いもよらない展開に、声が出た。
同時に、くわえていた餃子がぽろりとテーブルに落ちる。


…待って。
今、なんて言った?