この恋、予定外。

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仕事終わり、時間を合わせて上がった私たちは“あの時の”ラーメン屋を目指して歩いていた。


駅裏の細い道に入ると、人通りが少し減った。
見慣れた赤い暖簾が見えた瞬間、胸の奥がまた小さく跳ねる。

高橋さんは迷いなくその店の前まで歩いていって、暖簾の前でほんの一瞬だけ足を止めた。
その横顔を見たとき、ふいに思う。

この人も、同じことを思い出しているんだろうか。
それとも、そんなの私だけなんだろうか。
聞けないまま、私はその隣に立つ。


「…森川、今日も大盛り?」

「私が毎回毎回そんなに食べるとでも?」

「だよなあ」

色気のない会話をしながら、同時にお店の暖簾をくぐった。


店内に足を踏み入れた時から、スープと油の匂いがゆるやかに体の奥まで入り込んできた。

前と同じ匂い。
同じ温度。
同じ場所。
それだけで、胸の奥がわずかにざわつく。


カウンターだけの店内は、帰宅ラッシュの混みかけた時間で、奥に二席だけ空いていた。

「いらっしゃ─────」

店主のおじさんが顔を上げて、言葉を途中で止める。
私たちの顔を見て、すぐに驚いた表情へと変化した。

「…あ!」

その反応だけで、一気に記憶が呼び戻される。
おじさん、今はやめて!

「この間の兄ちゃんと姉ちゃんじゃねえか」

ほら覚えてる。
…とはいえ、やらかしたのは私のほう。


ラーメンの湯気。
まとまらなかった言葉。
勢いのまま、言ってしまった“好き”。
あのときの自分の顔が、頭の奥に浮かんで、思わず視線を逸らしそうになる。