この恋、予定外。

きょとんとしているうちに、瑞希さんが私の肩をやさしくぽんと叩いた。
深掘りはせず、理由も聞かず、背中を押すみたいに。

「じゃ、高橋くん。茉央のことよろしくね」

彼女はそれだけ言い残して、さっといなくなってしまった。
長い髪がさらっとなびくのだけが視界の端っこに見えた。


「で?行くのか?」

まだ返事をしてなかったことを思い出させる、彼の問いかけ。トントン、と腕を軽く叩く。

「打ち上げですか?」

聞き返すと、高橋さんはすぐに「いや」と首を振った。
ただ、それ以上はなにも話す気はなさそうだ。

腕に抱えていた資料やノートパソコンを抱え直し、私はひとつ咳払いした。

「味噌ラーメン、美味しかったので。また餃子とコンボさせます」

「─────え?おい、あのラーメン屋行くのか?」

「えー!だって最後、味しなかったんだもん」

言ってから、慌てて口を塞ぐ。
もうすでに高橋さんは笑っていた。

「だから、そういうところ」


どういうところ?
と、言いたかったのに、言う前に高橋さんに遮られる。

「じゃあ、仕事終わったら声かけに行く。またな」

「─────はい」


“またな”が、思っていたよりも、ずっと残った。