この恋、予定外。

またすぐに会議室がざわつく。
その光景を見ながら、高橋さんがちょっとげんなりしていた。

「…元気だな」

私は思わず笑った。

「女性社員ですから。新作の化粧品ですから。それだけで私たちは心が踊るもんなんです」

さっきと同じような言葉を繰り返すと、彼は少しだけ眉を動かした。

ほんの一瞬。
本当に一瞬だけ。

口角が動いた気がした。

でも次の瞬間には、もういつもの顔に戻っていた。


─────気のせいかもしれない。


女性社員たちが会議室を出ていったあと、私もテーブルの上の試作07を手に取った。

手の甲に、ワンプッシュ。
淡いベージュのリキッドが、するりと伸びる。


これがもし本当に、夕方まで崩れなかったら。

営業としては、かなり強い。


私は鏡を覗き込みながら、ぽつりとつぶやいた。

「絶対、売りたいなぁ」

その横で、高橋さんがこちらを見もせずに言った。

「売れるよ」

即答だった。
私は思わず顔を上げた。

「なんでそんな自信あるんですか?」

高橋さんは、少しだけ考えるように視線を落とす。
そして、変なことでも言った?みたいに怪訝そうな顔をした。

「え?だって、森川が言ったから」

私は一瞬、言葉を失った。
すぐに顔を逸らす。

「…なんですか、それ」

高橋さんはもう資料を見ていた。

「森川の営業の顔、信用しようと思ってるだけ」

淡々とした声。


私は鏡の中の自分の顔を見た。

朝より少しだけ、いい顔をしている気がした。