アラフォーバツイチ、花ざかり。


 翌週の木曜日、仕事を早めに切り上げた私は、自宅近くの庶民的な中華料理屋にひとり立ち寄った。

 美味しくてお手頃価格なので常連になっているのだが、今日の午後七時までビールが一杯二百九十円とさらに安いのだ。

 六時を過ぎた今、平日なので満席ではないが適度に賑わっていて、私は小さめの二人掛けのテーブル席に座った。

 さっそくお冷を持ってきた中国人の女性店員とも顔馴染みなので、冗談交じりにおねだりする。

「ハッピーアワー、今日で終わりなの? 延長してよ、ヤンさん」
「これ以上はダメネ。赤字なるヨ。ココ潰れるヨ」

 あけっぴろげに返されるのが清々しくて楽しい。「潰れたら困るわ」と笑い、とりあえずビールを頼んでメニューを開いた。

 ちょっとくたびれたお店で、サラリーマンたちに紛れて好きなものを好きなだけ飲んで食べる。この気楽さに慣れると、高級レストランなどへ行くのは気後れしてしまう。

 今日はなにを食べようかな、とメニューを選んでいる時、「らっしゃいマセ~」とヤンさんの声が響いた。なんとなく顔を上げて入り口のほうに目をやると……。