アラフォーバツイチ、花ざかり。

『……透也、なんか変わったね。優しくなったっていうか、丸くなったっていうか。彼女でもできたの?』
『好きな人ならいる』

 自分の変化はこの時はあまり自覚していなかったが、その通りだとしたら真琴のおかげだろう。彼女を思い浮かべると自然と口元が緩んだ。

 すると、藍奈は一瞬だけ笑みを見せて『そう』と軽く頷いた。どこか寂しそうに見えたのは、本当は婚約者との仲が良好ではなかったせいだろうか。

 この時はそれを知る由もなく、腕時計を見て話を切り上げようとした。

『これから彼女と会う予定なんだ。悪いけど──』

 その時、突然藍奈が胸に飛び込んできたのでギョッとした。一度は愛した人だが、今は密着されてもなんとも思わない、というよりほとほと困る。

 ぶっきらぼうに『おい』と言って引き離そうとしたものの、彼女は俺のシャツを掴んだままこう言った。

『ありがとう。透也とのことがあったから、今の幸せを大事にしようって思える。あなたはいつまでも特別よ』

 それは、もしかしたら藍奈が自分を改められたのかもしれないと感じさせるものだった。俺と離婚して反省したのなら、あの日々も無駄ではなかったと思える。

 万が一嘘だとしても、藍奈の今が知れて、話せただけでよかった。もう会うこともないだろうから──。