アラフォーバツイチ、花ざかり。

《なあ、もう一度一緒になろう? 今までの俺とは違うから、信じて。あの頃俺たちが夢見てた家庭、今度こそ作ろうよ。マコがよければ子供だって欲しいし、死ぬまで一緒にいたい》

 玄関のドアに背中をもたれて涙をこぼす私の頭の中で、真剣に説得する彼の声が約十二年前のものと重なる。

『マコ、結婚しよ。俺、ちゃんと金も貯めるから。しばらくふたりの生活を楽しんだら子供作って、皆で仲よく年取ろうよ』

 そういえばプロポーズされた時、今と似たようなことを言っていたな。あの時の私は、彼を信じて嬉々として受け入れたっけ。

 ……ああ、そうか。樹はまだ、私との未来を目的地にして列車に乗り続けているような状態なんだ。私は十年も前に、その列車から降りてしまったというのに。

 すでに離れてしまった彼に、いろいろな手段を使えば追いつけるだろう。でも、そうまでしてふたりの未来を目指したいと思えなくなっている。

 私はもう、新たな目的地を見つけてしまったから。

 だから、樹も降ろしてあげなければ。ひとりでは絶対にたどり着けない場所に向かうのはやめて、彼も新しい道を進めるように。

 でも今はなぜだか涙が止まらなくて、口元を片手で覆って泣くことしかできなかった。