アラフォーバツイチ、花ざかり。

 ずっと私に甘えてばかりだった樹が、こんなふうに包み込もうとしてくれるなんてね。

 視界が揺れる中、エレベーターを降りてとぼとぼと自分の部屋に向かいながら問いかける。

「……樹は、なんでそんなに私を想えるの? 離婚した時、きついこともたくさん言ったのに。この間だって、冷たく突っぱねたのに」
《なんでって……それは〝好きだから〟以外にないよ》

 当然だというようにさらりと告げられ、胸がぎゅっと締めつけられる。

《つらくても忘れられなくて、顔を見たり声聞いたりするだけで実感するんだ。やっぱり俺はこの人と生きていきたいって》
「樹……」
《好きだよ、真琴》

 気持ちがこもったストレートなひと言が鼓膜を揺らし、一気に瞼の裏が熱くなった。

 どうして、こういう時だけちゃんと名前で呼ぶのよ。どうして、求めている言葉をあなたが言うの──。

 じわじわと罪悪感が押し寄せる。その言葉をくれるのが彼だったらいいのにって、思ってしまったから。

「ごめ……っ、ごめんね、樹」

 玄関の中に入ると同時に涙が溢れ、震える声で謝っていた。

 それだけで私の気持ちがここにはないことを悟ったのか、樹はひとつ息を吐いて苦しげに《……謝るなよ》と呟いた。