橋を越えたら、私は川沿いへの道へ曲がり、透也はそのまままっすぐ進む。
小走りで橋を渡るその間、樹からの電話に出るかどうするか悩んでいた。道を曲がった時にスマホはまだ鳴り続けていたので、もう出てしまえ!とボタンをタップする。
「もしもし、どうしたの?」
《はっ》
「え?」
聞こえてきた第一声が、まるでくしゃみでもしそうな声だったので、私はぽかんとした。
続いて、樹はなんだか興奮気味に話し出す。
《マ……マコが出てくれた! 声が聞きたかっただけなんだけど、スルーされっぱなしだったからもうダメかと~》
「切っていい?」
やっぱりたいしたことない用件だったな、と呆れて間髪を容れずに返すと、彼は《ちょい待て!》と慌てて止めた。
さっきまでのシリアスな気分が一瞬吹き飛ばされたわ……。脱力する私に対し、彼は嬉しそうにしている。
《出てくれてほんとありがとう。土曜日も仕事だろうと思ったんだけど、なんか今かけたほうがいいかもって気になってさ。これ運命じゃない?》
「たまたまタイミングが合っただけでしょ」
《あはは。塩対応もたまんないね》
軽くて甘い発言が妙に心地よくて、ふっとわずかに笑みがこぼれた。



