アラフォーバツイチ、花ざかり。

 「あっ」と声を発して、カシャンと落ちたそれを慌てて拾う。画面が割れていないかを確認して幸い無事だったものの、表示されている名前を見て固まった。

 樹だ。ゴールデンウィーク明け頃から時々電話が来るようになったのだが、私は一回も出ていない。

 でも、今は好都合だ。このまま透也といても言い合いになるだけだろうし、電話を口実に今日は去ってしまおう。

「ごめん……電話来ちゃったし、行くね」

 まだ鳴り続けているスマホを握り、目前の橋を渡ろうと早足で歩き出す。

「待て」

 渡り始めたところでぐっと腕を掴まれ、引き留められた。

 振り仰ぐと、彼がどことなく険しい表情で私を見つめている。どうやら、さっきの画面を彼も見ていたらしい。

「元旦那からだろ。出るつもりか?」
「この間からかかってきてるの。ずっと無視してるけど、もしかしたらなにかあったのかも」

 そう心配する気持ちが多少あるのも事実だ。重大な問題が起こったなら家族に連絡するだろうけれど、これまでこんなに電話が来たことはないから気になる。

 しかし、透也は眉間のシワを濃くする。

「だとしても、君が世話を焼くことはない。また迫られるだけかもしれないだろ」