アラフォーバツイチ、花ざかり。

 乱れ始めた鼓動の音が、どんどん大きくなっていく。

 やっぱり、藍奈さんはまだ透也を想っていたのだ。そして彼も──。

 受話器を握りしめたままなにも返せずにいる私に、彼女は苦笑混じりに言う。

《すみません、どうでもいいことをべらべらと》
「あ、いえ……! また状況が変わって、家づくりを再開するようでしたらぜひお越しください。いつでもお待ちしておりますので」

 なんとか平静を保って穏やかに声をかけ、挨拶をして電話を切った。

 受話器を置いた瞬間、喪失感や虚無感に似た、なんともいえない感情でいっぱいになった。

 もしかしたら、ふたりはヨリを戻すのかもしれない。透也はその可能性はなさそうな素振りだったけれど、人の感情は変わりやすいもの。そうなったっておかしくはない。

 十年ぶりの恋心が呆気なく散ってしまいそうな予感がする。けれど、一度火が点いたものは簡単に消えはしないのもわかっている。

 心は重くなる一方で、それを紛らわそうと無理やり思考を仕事モードに切り替えた。