接客中のような調子で丁寧に頭を下げると、彼女は透也にも「それじゃ」と短く告げて歩き出した。
人混みに紛れていくスタイルのいい後ろ姿を見送り、私は本音を口にする。
「びっくりした……藍奈さんが元奥様だったなんて」
「俺も驚いたよ。真琴とも面識があったとは」
透也も藍奈さんに目線を向けたまま、ひとり言のように言う。
「俺たちが会ったのも十年ぶりじゃないか? ずっと避けるようにしてたんだが、普通に話せてよかった。……そうか、あいつも再婚するんだな」
微笑みを浮かべているものの、それがどこか影があるように感じて、胸がざわざわと騒ぎ始める。
藍奈さんが再婚すると知って、透也はどう感じたのだろう。『いつまでもあなたは特別』──彼女が放ったその言葉を聞いて、どう思ったのだろうか。
本当はまだ未練があるんじゃないかと、今の表情からも疑ってしまう。
藍奈さんのほうも、一度愛し合った人は確かに特別だけれど、新しいパートナーがいるのにそんなことを元旦那に言うだろうか。あんなに切なく愛しそうな笑顔で。
もしも、なにか理由があって再婚することにしたものの、藍奈さんもまだ透也を想っているとしたら……。
人混みに紛れていくスタイルのいい後ろ姿を見送り、私は本音を口にする。
「びっくりした……藍奈さんが元奥様だったなんて」
「俺も驚いたよ。真琴とも面識があったとは」
透也も藍奈さんに目線を向けたまま、ひとり言のように言う。
「俺たちが会ったのも十年ぶりじゃないか? ずっと避けるようにしてたんだが、普通に話せてよかった。……そうか、あいつも再婚するんだな」
微笑みを浮かべているものの、それがどこか影があるように感じて、胸がざわざわと騒ぎ始める。
藍奈さんが再婚すると知って、透也はどう感じたのだろう。『いつまでもあなたは特別』──彼女が放ったその言葉を聞いて、どう思ったのだろうか。
本当はまだ未練があるんじゃないかと、今の表情からも疑ってしまう。
藍奈さんのほうも、一度愛し合った人は確かに特別だけれど、新しいパートナーがいるのにそんなことを元旦那に言うだろうか。あんなに切なく愛しそうな笑顔で。
もしも、なにか理由があって再婚することにしたものの、藍奈さんもまだ透也を想っているとしたら……。



