アラフォーバツイチ、花ざかり。

「とう──」

 人の波をくぐって近づき声をかけようとした瞬間、驚きの光景が視界に入り、私は口をつぐんだ。

 透也はひとりではなかった。女性と向き合っている……?と気づいた直後、その女性が彼にすがるように胸に飛び込んだのだ。

 どくんと鼓動が大きく波打つ。透也は彼女を抱き留めたまま動かない。その人は、いったいどんな関係……?

 そして、ざわざわとした雑踏が一瞬途切れた時、女性が顔を上げて憂いを帯びた美しい笑みを浮かべる。

「いつまでもあなたは特別よ」

 そのひと言が聞き取れたと同時に顔がわかって、私は大きく目を見開いた。

 あの綺麗な人は……永嶋さんの彼女? この間さちいろハウスにやってきた、結婚間近の女性ではないか。どういうこと!?

 衝撃を受けて唖然としていると、透也は彼女の腕を掴んで優しく離す。斜め後方のここからでは、彼の表情もどう返したかもわからない。ただ、彼女の嬉しそうな笑顔だけはしっかり見えた。

 困惑しまくる中、胸にズキッとした痛みが走る。一連の出来事はほんの数秒だったはずだけれど、とても長く感じた。