ゴールデンウィークが終わり、いつもと変わらず仕事に勤しんでいる水曜日、昼休憩に入ってスマホを見ると真琴からメッセージが届いていた。
【今夜、少し会える? ジャケット返したくて】
そういえば貸したままだったな、と思い出すと同時に胸が弾んだ。
どんな用件であっても、たった数分だとしても会えるのが嬉しい。彼女を恋愛モードにさせるには、とにかく一番近い存在になるしかないだろうし。
こんなふうに年甲斐もなく浮き立っている自分に呆れつつ、【六時まで仕事だから、その後なら】と至極冷静な返事を送った。
絶対に残業はしないと決めてきっちり作業を終わらせ、待ち合わせている駅構内へ向かった。少し早く着いたので、コーヒーショップの脇でなんとなくネット記事を見て待つ。
「透也?」
ふいに、真琴ではない女性の声が耳に届いて、ぱっと顔を上げた。
そこには、おそらくもう会うことはないだろうと思っていた相手が立っていて、俺は目を見開く。
「藍奈……」
約十年前に愛した女性が、今も変わらない姿で俺に微笑みかけた。



