アラフォーバツイチ、花ざかり。

 怯えた子犬のような目をして若干身を引く彼は、やはり三十代後半には見えない。が、きっとこれが〝母性本能をくすぐる〟というやつなのだろう。

 依田さんは前方の道を通っていく仲のよさそうな家族連れを眺め、俺の言葉を噛みしめるように小さく頷く。

「あなたの言う通りですよ。もちろん自分でもわかってます。それでも、この十年マコだけを想ってやってきたので、もう少し悪あがきしたいんです」

 これも意外だが、彼も離婚してから誰とも付き合っていないようだ。

 依田さんと真琴はどこか似ている気がする。素直でまっすぐなものを感じるから、今の言葉も本当なのだろうと思える。

 だったらなおさら、奪われないように手を打っておかなければ。

「彼女は渡しませんよ」

 静かな圧を込めてひと言告げ、コーヒーを飲み干した。

 依田さんは数秒かかって意味を理解したのか、しばし固まった後にはっとしてこちらを向く。

「やっぱり、網坂さんもマコのことを……?」
「ええ」

 はっきり認めると、彼の表情も強張っていく。『やっぱり』と言うところからして、なんとなく予想はしていたらしい。