アラフォーバツイチ、花ざかり。

「一棟貸しヴィラか……面白そうですね。場所はどこですか?」
「熱海。海のすぐ近くで景色も綺麗なとこだよ」

 熱海なら新幹線ですぐだし、現地に行くのも比較的ラクだろう。似たような別荘はこれまでも作ってきたが、貸切のヴィラはまだ設計したことがない。周囲の景観と合わせて考えるのが楽しそうだ。

 今抱えている仕事も、ひとつは設計の最終段階でもうすぐ山場は越えるし、無理なくできるだろう。

 頷いて「今の案件が一段落したらやりますよ」と答えると、支店長はなぜかデスクに片手をついて大きく息を吐き出す。

「よかったぁ~。いや、網坂くんなんか最近上の空になってる時があるから、もしかして独立とか考えてるのかも?と思って心配してたんだよ」

 ぱっと明るくなった表情でそう言われ、上の空になっていたのかと初めて気づかされた。

 確かに、集中力が途切れる休憩中、最近は自然に真琴のことが頭に浮かんでいる。一昨日、彼女を抱きしめてからは特に、気がつくと手が止まっていることもあるのでいけない。なんだか学生の頃に戻ったみたいでいたたまれないな……。

 それがまさか、上の空なのは俺がここを辞めようとしているからではないかと心配されていたとは。