「こんなふうに思える人、きっと一生できないと思ってた」
胸の奥が、ぎゅっと痛む。
「私、ずっと一人だった」
いつも教室の端で、ひとりで座っていた。
いくつもの学校に通ってきたけれど、そのどれもで。
それでいいんだって、いつの間にか、その環境を自分で選ぶようになっていた。
「でも——」
涙で滲む視界の向こうに、戸惑いの表情を浮かべた翼がいる。
「翼が、変えてくれたの」
少しだけ息を吸った。
「翼が、声をかけてくれて、隣にいてくれて、だから私、ここにいる」
伝えたかったことが、やっと言える。
胸の奥に溜まっていたものが、少しずつほどけていた。
翼は何も言わず、視線を落とした。
「翼が家族に対して思ってることに、私が口を出せるとは思わないし。そこに私が何を言っても、意味ないかもしれない」
私は一歩、翼に近づいて、震える手で両手を握った。
「それでも——翼に救われた人がいるって、忘れないで」
涙が頬を伝う。
それでも、私は笑顔を作ろうとした。
いつも、翼がしてくれるように。
「翼に、生きていてほしいって願う人が、本当にたくさんいる」
ぎゅっと手のひらに力を込める。
「私も、その一人」
——きっと忘れちゃうけど。
それでも。
大好きだと。
助けたいと。
そう思わせてくれた翼には、生きていてほしい。
潮風が吹き抜ける。
頬を濡らした涙が、少し冷たかった。



