オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

静けさを消し去るように、翼は床に散らばっていた箱を勢いよく蹴り飛ばした。

ガタン、と大きな音が部屋に響く。

私は驚いて、思わず身をすくめた。

その一瞬の間に、翼はもう部屋を出ていた。

「まって……!」
翼が、防波堤に行ってしまう。

そんな恐怖が、心を切り裂く。

玄関へ向かう背中をどうにか止めたくて、私は後ろから飛びつくように抱きついた。

大きな振動に、翼は一瞬足を止めた。

「違うよ!翼のせいなんかじゃない!」
必死に腕に力を込める。

「お願い翼、止まって!」
泣き叫ぶ私の腕に、翼はそっと手を触れた。

その温かさに私は一瞬期待する。

けれど次の瞬間、彼はその温かい手で、私の腕を掴んで、自分の体から離した。

「……汐莉には、分からないよ」

顔をあげると、見慣れた優しい笑顔があって、私は目を見開く。

今まで見せてくれていた感情を、全部隠すみたいに。

目の前に、大きな壁が下りたような笑顔だった。

翼は背を向け、そのまま玄関を出ていく。

だけど、どれだけ壁を下ろされても、私はどうしても、翼を止めなきゃいけない。

「翼……!」
私は涙でぐしゃぐしゃになりながら、言葉を探す。

玄関を出て、迷いなく歩き出す彼の背中に、必死で叫んだ。

「翼をお腹に宿した写真のお母さん……すごく嬉しそうだった!」
「翼のこと、きっとすごく愛してたんだよ!」

振り返ってくれない翼に、地団駄を踏んで、また私は追いかけるようにかけ出す。

「お父さんだって……!」
「翼のこと、本当に大切に思ってる!」
「翼のことが、何より大事だって言ってたんだよ!」

何でもかんでも、思いつくままに叫ぶ。

それでも翼は、止まらなかった。

その背中を見て、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。