オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

「……お父さんが、教えてくれたの?」

慎重に尋ねると、翼は少し首を傾けた。

「っていうより、俺が聞き出した」

そう言うと、翼は立ち上がる。

笑顔のない、無表情のままの彼が、怖かった。

「こっち」
スタスタと廊下を歩いていく翼を追いかける。

スッと小気味良い音を立てて開かれた障子の先に広がった光景に、私は思わず息を飲んだ。

開けっぱなしの押し入れから飛び出したたくさんのもの。
机の上も、床も、見境なく物が散らばっている。

まるで、大地震が起きたあとみたいな状態だった。

「それ聞いてから、なんか落ち着かなくて……」

翼は部屋を見渡して、ため息をこぼす。

「さっきから母さんのもの、探してた」

翼のどうしようもない思いが、苦しいくらいに伝わってきて、私は唇を噛み締めた。

少し間を置いて、翼は、小さく付け足した。

「……ここ、母さんの部屋だったんだ」

声は、どこか暗い。

「ずっと父さん、綺麗に保ってたんだよ。どれだけ忙しくても、ここの掃除だけは欠かさなくてさ」

翼は足元に広がっていたアルバムに手を伸ばした。

開かれたページには、たくさんの写真が並んでいる。

どの写真にも若い翼のお父さんと、優しそうな女性がいた。

「……仲良さそうだろ」

そう小さく呟いて差し出した手は、少しだけ震えていた。

私は、アルバムを受け取って静かにページをめくる。

確かに、どれも、幸せそうで。
そこに写っていたのは、曇りのない笑顔ばかりだった。