オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

夏の空気が、むっと肌にまとわりつく。

私が向かった先は、翼の家だった。

インターホンに手を伸ばしたそのとき、玄関の扉がガラッと開いた。

「あ……っ、こんにちは」
思わず一歩下がって挨拶をする。

「こんにちは」
出てきたのは、翼のお父さんだった。

すでにお祭りの準備をしているのか、紺色の法被を着ている。

「今日、汐莉ちゃんも来るんだろ」
「あ……はい!翼と、約束してます」

翼のお父さんは少し笑って、私の頭に軽く手を置いた。

「焼きそば、おまけしてやるから食いにおいで」
「はい!」

そんなやり取りを残して、翼のお父さんは足早に家を出ていった。

「汐莉?」

声が聞こえたのか、翼が玄関まで出てきてくれる。

会えたことに安心はしたけれど、どこかぎこちない笑顔の翼に、すぐ不安になった。

「どうしたんだよ、まだ15時だけど」

無理に明るくしているみたいな顔が気になってしまう。

「……お祭り、楽しみで、落ち着かなくて」

絞り出した言葉は、嘘みたいな明るい理由。

翼は目をくしゃっと細めて笑った。

「なんだよそれ」

笑顔が見れたことに、私はほんの少しだけホッとする。

でも、今度は、落ち着きなく、指先を動かし続ける翼の手が気になった。

「上がったら?」
翼は、玄関を大きく開ける。

「ありがとう。おじゃまします」
私は靴を脱いで、静かに家に上がった。