オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

集合時間より少し前、防波堤に行けば翼に会える。

それはもう分かっているから、今日は必ずそこで止める。

何度も何度も考えた。

どこで声をかけるか。
何を言えばいいのか。

けれど、何度シミュレーションしても、胸のざわつきは消えなかった。

これで最後だと思うと、失敗できない緊張感に苦しくなる。

深く息を吐いて、私はリビングへ降りた。

お盆休みで、お父さんも家にいる。
キッチンには三人分のお昼ご飯が用意されていた。

「いただきます」

いつもと同じお昼ご飯だけど、今日はその時間が、少しだけありがたかった。

箸を動かしながら、胸の奥の緊張が少しずつほどけていく。

そのとき、ふと一つの疑問が浮かんだ。

ずっと胸のどこかで引っかかっていたものに、箸を止める。

翼が、海へ向かった理由。
それはきっと、お父さんのことだ。

『俺のせいで』
『俺がいなければ』

翼は、父親の夢を邪魔していると思い込んで、自分がいない方がいいんじゃないかと苦しんでいた。

それは、もう分かったつもりでいる。
そしてきっと、間違っていない。

だけど——今朝見た翼は、そこまで思い詰めているようには見えなかった。

どうして今日、翼は海へ向かうんだろう。

毎年美咲や健太と行っている夏祭りの話をする翼は、とても楽しみにしているように見えた。

その約束を破ってまで、どうして今日だったのか。

そこだけが、どうしても分からない。

昼ご飯を食べ終えて、やっぱり夕方まで待てそうになかった私は席を立った。