オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

眩しいくらいの朝の光が、まっすぐ差し込んだ。

目の前の公園では、宿題から逃げてきた小学生が遊んでいる。

この町ならではの、夏の朝の風景。

——何度も見てきた光景。

いつも通りそこにある、見覚えのある後ろ姿が、くるりと振り返る。

「おー、汐莉!」

片腕で日差しを遮りながら、眩しそうに笑う。
変わらない、あの爽やかな笑顔に、涙が溢れた。

「……翼」

窓の外には、少し前のいつも通りが広がっている。

「汐莉! 今日、18時な!」

翼の声が、窓の下からまっすぐ届いた。

18時に集合の約束をした、夏祭り。

——その時間に、翼は来ない。

私はこっそりと涙を拭い、大きく息を吸った。

「約束だからね!」

翼は「おー!」と明るく返事をして、公園の方へ駆けていく。

小さくなっていく後ろ姿を見ていると、また涙があふれてきた。

そっとカーテンを閉めて、そのままずるずるっと背を向けて座り込む。

きっと今日が、本当に最後のチャンスになる。

今日、少しでも何かを変えたら——私はきっと全てを忘れてしまう。

目を覚ました後の私は「過去に戻ろう」と思うことすらできないだろう。

大丈夫。
ここまで少しずつ変えてきた。

最初の私が声をかけるのとは違う。

きっと今日は——止まってくれる。

繰り返してきた日々の中で見た、翼のいろんな表情が浮かび、私はぎゅっと目を固く閉じた。

2026.8.16

電源を入れたスマホに表示された日付は、紛れも無い夏祭りの当日だった。