オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

次のページを開いた瞬間、ざわっと鳥肌が全身を巡った。

そこだけ、真っ黒だった。
何度も何度も塗りつぶしたみたいに、紙が破れそうなくらい強く塗られている。

「……まって」
小さく声が漏れた。

「……私……」
その瞬間——頭の奥で、赤い光がチカチカと点滅した。

刃物で刺されたみたいな痛みが胸に走る。

そして——何度も、何度も、ゼンマイを回した記憶が、ひと息に蘇った。

私は、はっと振り返った。
ベッドの枕元には、小さな木箱が転がっている。

「……忘れてた」
真っ黒なページを握りしめたまま、私はその場にしゃがみこんだ。

震えが止まらない体を、自分の腕でぎゅっと抱きしめる。

「……怖い」
小さくこぼれた声は、自分でも驚くほど震えていた。

防波堤で会ったお姉さんの言葉が、頭の中によみがえる。

——『なにか異変を感じてるなら、もう、やめたほうがいいかもしれないね』

昨日は、忠告を無視してオルゴールを回した。

やっぱり、お姉さんのいうとおり、私は、思い出を代償にしていたんだ。

オルゴールで時間を戻すたびに。
翼を助けようとするたびに。

私の大事な思い出が、少しずつ消えていっていた。

これ以上戻ったら——きっと、私は何も分からなくなる。

翼のことも。
この街に来てからのことも。

全部、全部。

そんな確信に近い危機感が、私の震えを一層大きくした。