オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

夜になっても、胸の奥のざわつきは消えなかった。

いつの間にか枕元が定位置になったオルゴールに目を向ける。

ゼンマイを回して、その音を聞きながら眠りにつくのが、もう当たり前になっていたから。

でも……。

——『もし、なにか異変を感じてるなら。やめたほうがいいかもしれないね』

お姉さんの声が、胸の奥をヒヤリとさせた。

私はオルゴールを枕元からそっと持ち上げて、引き出しの中にしまう。

異変は、怖いくらいに感じていた。

部屋の電気を消すと、窓の外から波の音がかすかに聞こえてくる。

いつもなら、もうオルゴールのゼンマイを回して眠りにつく時間だった。

けれど、何度寝返りを打っても、眠気はやってこない。
私は小さくため息をついて、起き上がった。

机の上に手を伸ばし、絵日記を手に取る。

毎日続けられたイラストを見ているだけで、胸の奥から記憶が静かにほどけていく。

翼への気持ちが、またひとつ、はっきりと形になっていく。

いちばん新しいページは、防波堤の上で、二人並んで横になっているイラストだった。

そこから思い出されるのは、昼の光の中で、少しだけ眠ってしまった時間。

二人で肩を並べて防波堤でお昼寝をして、起きたときに身体中についたコンクリートの跡に顔を見合わせて笑った。

私は思わず指でその絵をなぞる。

眠る前、翼は、少し疲れた顔をしていた。
夜に見る彼は、最近、ときどきそんな表情を見せる。

でも、私の隣で空を見ながら、翼はぽつりと言った。

『……俺、汐莉といると落ち着くわ』
その声を思い出すと、胸がじんわりと熱くなる。

少しずつだけど、何かが変わり始めているのは確かだった。

もう少し。
もう少しで、届く気がする。

静かな部屋の中で、心臓の音だけがはっきり聞こえた。

——それなら、やっぱり私は。

立ち上がり、机の引き出しを開けた。

小さな木箱を手のひらに乗せると、指先がわずかに震える。
それでも、迷いはなく、私はゼンマイに指をかけた。

震える指先で、覚悟をこめて。

ギュッ、ギュッ、と小さな音が夜の部屋に響いた。