オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

今まで誰にも共有できなかった不思議な現象が、確かなものとして腑に落ちていく。

「私には、どうしても戻りたい理由があってね」

お姉さんは、多くを語らなかったけど、波の音みたいに穏やかな声は、さまざまな感情を感じさせた。

「……五回目くらいだったかな」
お姉さんは遠くを見るように言う。

「戻ってきたとき、急に息ができなくなった」

その言葉に、私は思わず顔を上げた。

「そのまま倒れて、気づいたら病院だった」

さらりとした声だったけれど、その内容は重くて、他人事ではなくて、胸が大きくざわつく。

改めて見ると、肌は白すぎるくらい白くて、細い腕には骨の形がはっきり浮いていた。

「私が……過去に戻った代償は、健康な体だったの」

私は息をのんだ。
そんな私を見て、お姉さんは少しだけ目を丸くする。

「……人によって違うのかもね」

それから小さく呟いて、困ったように笑った。

「本当はね、こんなオルゴール、捨てちゃった方がいいと思ったんだ」

潮風が、長い髪を揺らす。

「でも——確かに私は、救われたの」

遠くを見つめるまっすぐな目を、私は静かに見つめていた。

「途中でやめちゃったから、私の願いは叶わなかったけど……」
それでも、とお姉さんは静かに続ける。

「自分の中では、ちゃんと終わらせることができた」

そこまで言って、お姉さんは私の方を振り返った。

「だからね、あの日、この防波堤でうずくまっていたあなたを見て」

夕焼けが、海に溶けていく。
私は膝の上で握ったままの手を、ぎゅっと強く握り直した。

「もしかしたら、この子も救われるかもしれないって思ったの」