オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

コツコツと距離を縮めていけば、翼を助けられるかもしれない。

そんな淡い希望を頼りに、それからも毎晩、私はオルゴールを回した。

戻る日付は色々だったけれど、翼との知らないエピソードは少しずつ増えていく。

最初はただ、必死だった。
翼を助けたい、それだけだった。

なのに気がつけば、無邪気に楽しいと思える日や、前よりもずっと特別な距離を感じる日が増えていた。

たとえば、放課後。
防波堤までの帰り道を、二人で並んで歩くのは、いつの間にか当たり前になっていた。

「汐莉、帰ろうぜ」

前は、みんなに見つからないように一度下校してから集合していたのに。

そんなことが嘘みたいに、翼は放課後になると自然に私を誘ってくれる。

「今日は何描くの?」
「んー、体育、かな」
「体育?なんで?」
「サッカー。シュート決めてたじゃん」

そう言うと、翼は少しだけ目を丸くした。
過去の私なら、こんなこと恥ずかしくて言えなかった。

でも今は、思ったことをそのまま伝えられる。

「なんだよ、照れるだろ!」

そう言いながら、ぐしゃぐしゃと私の頭をかき回して、軽く肩を押してくる翼。

かつて美咲にしていたようなじゃれ合いまで、自然に生まれるようになっていた。

私は嬉しいのを気づかれたくなくて、思わず顔をそらす。

きっと翼は、そんな私を見ておかしそうに笑っている。

……でも、それでもよかった。

翼が楽しそうなら。
この関係が、いつか翼を守ることに繋がるのなら。

たとえ気持ちがバレていたとしても、構わない。

学校でも、放課後でも、二人で過ごす時間は少しずつ増えていった。

明るく爽やかな笑顔だけじゃない、ふとしたときの、静かな表情や落ち込んだ顔。

そんな、今まで知らなかった翼の表情も、少しずつ見られるようになっていて。

翼の隣にいることが当たり前に感じるくらい、私たちの距離は近くて、温かいものになっていった。

「俺、汐莉といると落ち着くわ……」
夕暮れに染まる防波堤で、翼がぽつりとつぶやく。

海はオレンジ色に光っていて、静かな波の音だけが聞こえていた。

その隣で、私は小さく俯く。

「……私もだよ」
胸の奥が、ぎゅっと苦しくなる。

本当に——こんなに大切で、こんなに大好きで。

ずっとひとりでもいいと思っていたことが、嘘みたいだった。

今は、ただ……翼の隣にいたい。

願いは、たったのひとつなのに。

それが叶うのは、眠っているはずの夜の間だけ。

それでも、この時間はあまりにも幸せで。

こっちの世界のほうが本当だったらいいのにと、思わずにはいられない。

このままずっと、ここで、翼と一緒にいられたらいいのに。

そんなことを、何度も何度も、考えてしまう。

気がつけば、私は、夜になるのを待っていた。

翼に会うために、オルゴールを回すその瞬間が、楽しみになってしまうほどに。

少し前から感じていた、現実での違和感からも目を逸らしてしまうほどに。