オルゴールが鳴る夜、何度でもきみの元へ

段ボールを貼り終えると、ふっと部屋に静けさが戻った。

さっきまで忙しく動いていた翼が、作業を終えて窓から手を離す。

窓ガラスに当たる雨の音が少し小さくなって、この部屋の中だけ時間がゆっくり流れているみたいだった。

「……今も、絵描いてんの?」

視線の先には、今朝確認したまま、開きっぱなしの絵日記があった。

開かれているのは、昨日の日常。
大雨警報が出始めたテレビを眺める家族の様子。

「うん。日課だから」

あまりにも日常すぎる絵に、恥ずかしくなりながら答える。

「最近は、どんな絵描いてんの?」
翼の質問に、いろいろな景色が蘇った。

ページをめくれば、たくさんの海の景色や、町の風景がそこにはある。

それから——翼や、健太や、美咲と過ごした日の絵も、たくさん、たくさん描かれていた。

……前は、見せなかったんだよね。

翼たちをたくさん描いているのが恥ずかしくて、隠してしまったのだ。

でも今回は……伝えたかった。

翼の存在が、私にとってすごくすごく大切なんだって。

「……見る?翼たちもいっぱいいる」
「まじ?いいの?」

二人で肩を寄せるようにして、絵日記をのぞきこむ。

「うわ、これ防波堤じゃん」
「これ、潮干狩りの日?」
「健太、めっちゃ似てるな」

ページをめくるたび、翼が楽しそうに声を上げる。
そのたびに、私はつられて笑ってしまった。

「すげー……知ってる景色ばっかりだ」
翼は絵日記を見つめたまま、ぽつりと言った。

「俺、汐莉の絵、めっちゃ好きだ」
その言葉に、思わず目を丸くする。

こんなにまっすぐ誉めてくれるなんて思っていなかった。

何も言えずにいると、翼がふっと顔を上げた。

そして、今さら自分の言葉に気づいたみたいに、少し照れたように笑う。

「……あ、いや、なんか急に言ってごめん」
後頭部をぽりぽりとかきながら、翼は照れくさそうに目をそらした。

どきどきするような落ち着かない空気が流れる。